ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
 桜乃 結萌の一件からひと月程が経ち、本格的に映画の撮影が始まるとスケジュールは映画中心に変わって現場での拘束時間も長くなる。

 その中でも海岸を舞台にしたシーンの撮影が特に大変だった。

 天気に左右されて思うように撮影が出来なかったり、光や波の具合で何度も撮り直しになったり。

 しかもこのシーンは都内から少し離れた海岸での撮影だった為、出演者やスタッフたちは旅館を貸し切り、泊まり込みの撮影を強いられていた。

 私は小柴くんと交代で現場に留まったり都内に戻って仕事をこなしたりと忙しなく動いていて、海岸での撮影期間中はほぼほぼ雪蛍くんと二人きりになる時間なんて無い。

 それには私は勿論、甘えたがりの雪蛍くんにはかなりの苦痛だったようで、泊まり込みの撮影ももうすぐひと月が経とうとしていたある夜、彼にお願いされた私は気分転換も兼ねて旅館から少し離れた辺りまでドライブをしていた。

「あーもう、マジで有り得ねぇ……辛い」
「もう少しで撮影も終わるってスタッフさんたちも言ってたよ? あと少しの辛抱だよ」
「わかってるけどよー、つーか、莉世は辛くねぇのかよ?」
「え?」
「こっちに来てから全然シてねぇんだぜ? 欲求不満にならねぇのかよ?」
「なっ!」

 雪蛍くんの言いたい事は分かる。分かるけど、ここはもう少しオブラートに包んで発言して頂きたいものだ。
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