ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「まさか莉世、お前都内に戻ってる時に他の男と……」
「もう! 馬鹿な事言わないでよ! そんなのいる訳ないでしょ? 毎日忙しく仕事をこなしてるだけです!」
「悪い悪い、冗談だって。怒るなよ」
「もう」

 人気のない高台にやって来た私たちは車を停めて車内で話をする。

 密室、人気の無い……暗い場所。

 この条件さえあれば、恋人同士なら自然とそういった雰囲気に飲まれてしまう。

 暫くご無沙汰な私たちなら、特に。

 でも勿論、ここではキス止まり。

 いくら人気が無かろうが場所は弁えなくてはいけないから。

「……ッん、……ふ……っぁ、」

 こういう、深い口付けは久しぶり。キスだけで身体が蕩けてしまいそうになる。

「莉世、顔ヤバすぎ」
「え……やだ、……変?」
「ちげーよ、エロくてそそられるって事」
「もうっ、やだ……」

 けど、こうなるとキスだけでは歯止めが効かなくなるもので……。

 一瞬理性が飛びかけて雪蛍くんのペースに流されてしまいそうになったけれど何とか保つとむくれる彼を宥め、撮影が終わって家に帰れたら好きなだけ堪能するという彼に小さく頷いた私は旅館まで再び車を走らせた。


「それじゃあ、明日も撮影頑張ってね」
「お前、今から都内帰るのかよ」
「うん、明日は朝から打ち合わせがあるから」
「……気を付けて帰れよ」
「うん、分かってる」
「着いたら連絡しろよ、待ってるから」
「うん、ありがとう。それじゃあね」

 雪蛍くんを旅館に送り届けた私たちは極力小声で会話をして別れたのだけど、この現場をある人に見られていた事に全然気付かなかった。
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