ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「南田くん、君の仕事振りはとても素晴らしいという噂は聞いている。だから当初は今度デビューする新人アイドルのマネージャーをと思っていたのだが、近々雪蛍のマネージャーが降りたいと話していてな……優秀な君に、是非雪蛍のマネージャーを頼みたいと思ったんだよ」

 渋谷 雪蛍は今目の前にいる社長のお孫さんで、事務所一の稼ぎ頭だ。

「し、仕事振りを褒めていただけた事はとても光栄ですが、私なんかが彼のマネージャーなんて……」

 この話、私のような専属マネジメント経験の無い新人には勿体ない話だと思うけれど、それ以上に初めての担当が超売れっ子芸能人だなんて、正直荷が重すぎる。

「不安に思う気持ちも分かる。だが、これも経験だと思って……是非やってみてはくれないかね?」

 荷が重すぎるけれど、社長直々にお願いされては断れない。

「その……力不足かもしれませんが、精一杯やらせていただきます」

 不安はあったのだけれど、このチャンスを逃したら勿体ないと思った私は、考えた末に社長の申し出を受ける事にした。

 それからというもの、慣れない仕事に追われ失敗も沢山したけれど、その度助けてくれたのは他でもない彼、雪蛍くんだ。

 マネージャー仲間の間では正直あまりいい評判を聞かなかった彼だけど全くそんな事はなくて、寧ろ私は彼のおかげで仕事に慣れていく事が出来て感謝すらしていた。

 でも、今から約ひと月程前を境に、彼は変わってしまった。

 というより、優しかった彼の方が偽りの姿で、今こうして私の反応を楽しんでいる彼が――本来の姿だったのかもしれない。
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