ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いえ。マネージャー業は大変ですからね。睡眠時間も削られるし、体調が優れない事、僕もよくありますよ」

 そんな会話を交わしながらエレベーターに乗った所までの記憶は確かにあったのだけど、

「……南田さん?」
「…………」

 原さんのその呼び掛けが微かに聞こえて来たのを最後に私の意識は闇へと堕ちていった。


 そして、それからどのくらいの時間が経ったのか、ふと目を覚ました私は自分が置かれていた状況に、驚愕した。

「……え?」

 私は何故かベッドの上で寝かされていたのだ。

 しかも、服や下着がベッドの下に散乱していて、私は何も身に付けていない。

「な、んで……?」

 あまりに衝撃的過ぎて頭が回らずに混乱する。

 そこへ微かにシャワーが流れる音が聞こえて来たことで身体が酷く震え出す。

(誰か居る……。まさか私、その人と?)

 今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られるも、相手を確認した方がいいのか悩むところ。

 そんなさ中遠くの方で私のスマホの着信音が聞こえて来た。

(この着信音……雪蛍くんからだ……)

 とにかく、一刻も早くここから出よう。

 そんな思いが勝った私は急いで服を着てささっと身なりを整えると、荷物を手にして逃げるように部屋から出て行った。
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