ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
 その事を雪蛍くんに話すと、彼の表情は険しくなる。

「急に、眠くなった?」
「うん。あの日も睡眠不足だったから、いつもの事かなって思ったんだけど……」
「莉世、待ち合わせ場所に着いた時からお前の分の飲み物が用意されてたのか?」
「ううん、私が着いてからお店の人が水を持って来てくれて、コーヒーも自分で頼んだよ?」
「……そうか。その後で、席を立ったりしてねぇか?」
「え? ううん……席を立ったりはしてないよ…………あ、でも一度小柴くんから仕事の書類の確認がしたいって電話があって、席に着いたまま一分くらい小声で話をしたかな」
「その時、原に背を向けてたか?」
「うーん、そうだね、背を向けてコソッと小声で話してたかな……」
「そうか。なら急な睡魔は恐らく薬を盛られたんだよ」
「え?」
「だっておかしいだろ? 確かに睡眠不足ってのは否定出来ないけど、記憶を無くすくらいの眠気なんて」
「あの時の眠気は本当に酷かった……けど、そんな事……」
「恐らく、量はごく少量だったんだろうけど、即効性があったんだと思う。睡眠不足も相俟って効き目が強かったんだ、きっと」
「……そう、なのかな……」

 雪蛍くんの言葉を聞いた私の身体は微かに震えていた。

 まさか自分が、そんな事をされただなんて、思いもしなかったから。
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