ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
 正直私だって聞きたくないけど、でも、今更逃げても事実は変えられないから、ハッキリさせるしかないと分かっているから、私たちは原さんの言葉を待つ。

「……いや、それは違うんだ。その、南田さんを部屋へ連れ込み、ベッドに寝かせたまでは僕のやった事なんだけど、その後僕は指示された通り部屋を出て、暫く経った後で再び呼ばれて部屋へ入り、その後は浴室でシャワーを浴びる素振りをしていただけ。それに、恐らく南田さんはあくまでも服を脱がされただけで、他は何もされてはいないはずなんだ」
「え…………それ、本当に?」
「おい、それは確かなのか!?」

 原さんの言葉に、私と雪蛍くんは互いに顔を見合せてから彼に確かめた。

「恐らく。僕はそう聞いている。《《彼女》》もそこまで酷い人間じゃないんだ。君に少しばかり苦痛を与えたかっただけのはずだから」

 原さんの話に何か引っ掛かりを感じたらしい雪蛍くんは急に考え込む素振りをする。

「……話を持ち掛けられた時、初めは止めるように言ったんだけど聞き入れて貰えず、君の飲み物に睡眠薬を入れて意識を奪って部屋に連れて行けという指示を受け入れた。僕はどうしても逆らう事が出来なくて、そんな真似をした。本当に済まなかった」

 原さんは何度も頭を下げながら謝罪をしてくれる。

 雪蛍くんの見立て通り私は彼に薬を盛られていたのだ。

 その事はやはり悲しくなったけれど、私は彼と身体の関係を持ってはいなかったという事実を知れて嬉しかった。

 それだけがずっと、不安で堪らなかったから。

 すると、何かを考え込んでいた雪蛍くんは、「おい、今から桜乃をここに呼べ」と、原さんに向けてそう言い放った。
< 49 / 94 >

この作品をシェア

pagetop