ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「な、何よ? 嘘じゃないわよ? 本当に売り込むわよ? 貴方自分の立場分かってるの? そんな女の為に、人気や地位を失うかもしれないのよ?」

 桜乃さんのその台詞には、私も頷きたくなる。

 だって、私の存在のせいで雪蛍くんの今後が左右されてしまうなんて耐えられないから。

 何とかして彼に考え直してもらおうと口を開きかけた、その時、

「構わねぇよ。遅かれ早かれ俺は莉世との事を公表するって決めてるし、仮に公表して俺の人気が落ちたとしても、その程度で俺のファンを辞める奴からの応援なんていらねぇ。仕事だって、貰えるものだけを一生懸命やってく。もうこれで話は終いだ。桜乃、お前は謝る気がないらしいから俺はこの件を社長やアンタの事務所にも報告する。それじゃあな」
「渋谷くん、待ってくれ――」

 淡々と言葉を並べた雪蛍くんは話は終わりと言って私の手を取ると、原さんの呼び掛けを無視してそのまま部屋を出た。

「雪蛍くん、あんな事言って……」
「いいんだよ。前にも言ったけど俺は莉世と別れるつもりねぇんだから、いずれはバレる。それが早いか遅いかだけだ。さてとすっかり遅くなっちまったな。帰るぞ」

 啖呵を切って部屋を出た彼を心配する私をよそに雪蛍くんはというと、気にするどころか晴れやかな表情すら浮かべていた。


 そして、結局この件は宣言通り雪蛍くんが事務所を通して桜乃さんの事務所にも報告をしたのだけど、相手側からの謝罪と私たちの関係を週刊誌に売り込む事はしない、証拠も全て処分したから共演NGという条件だけは取り下げて欲しいという頼みを聞き入れる事で決着が着き、私たちはこれまで通りの日常を取り戻す事が出来たのだった。
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