ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
優しく、時に嫉妬深い彼からの溢れる程の愛情
「あー疲れた……もう無理」
「お疲れ様、撮影、今日はだいぶ長引いたね」
「ああ、新人がとちってばっかで何度もやり直し。ようやくいけたと思ったら今度は別の奴がミスしてさぁ、本当イラつく」
「まあまあ、誰にでもミスはあるよ。ね?」
「分かってるけどよ……」
「ほら、もう帰ろ? 明日は午後からだし、今日はこれからゆっくり休めるよ」
「なあ……莉世(りせ)、今日も泊まってく?」
「うーん、そうだね……でもなぁ」
「泊まってかねぇなら、俺が莉世のとこ行くぞ?」
「それは駄目だよ。……仕方ないなぁ、分かった、今日も泊まるよ。でも、今週はもうこれで四度目だよ? もう少し減らさないと……」
「何だよ、ジジイが文句言ってんのか?」
「そうじゃないけど、節度ある行動をって言われてるから」
「分かってるって。今週は今日で終わりにするよ」

 私と雪蛍(ゆきほ)くんが交際を始めてから、もうすぐ一年という月日が経とうとしている現在、社長を始め、事務所の人たちにはそれとなく知られているものの世間には相変わらず内緒のまま。

 私は今日も彼のマネージャーとして業務をこなし、彼の送迎を行っていた。

 雪蛍くんは早く公表したいみたいだけど、私や社長はまだ早いと思っている。

 だって、彼は元から人気ではあったけれど、最近は更に人気度が増しているから。

 それというのも、

「あ、雪蛍くんの曲が流れてる」
「あー、この曲はなかなかの出来だよな。歌いやすかったし」

 最近彼は歌手活動も始め、以前にも増して活躍の場を広げているからだ。

 雪蛍くん本人は歌が少し苦手で社長がオファーを受けようとした時は渋っていたのだけど、レッスンを受けてみるとみるみる上達していき、当初の予定通り主演ドラマの主題歌を担当する事になった。

 するとデビュー曲は記録的ヒットとなり、早々に二曲目を発売。今ちょうどラジオから流れてきたのが彼の二枚目のシングルに収録されているカップリング曲だった。

 とまあ、こんな感じで以前よりも売れている事もあって、熱愛報道なんてものが出回りでもすればイメージダウンは避けられないので、私たちの関係はまだまだ内緒にしなくてはいけない。

 勿論私だって、周りに言えたらどんなに楽かと思うけど、知られればリスクも伴うし、何より公表すれば彼のマネージャーを降りなくてはいけなくなってしまうので、まだまだ彼をサポートしたい私は、今はまだこのままでいいかなと思ってしまうのだ。
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