ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「いや、悪いね、わざわざ来てもらって」
「本当だよ。いちいち呼び出すとか、何なんだよ一体」
「雪蛍くん、そんな言い方しちゃ駄目だよ」
「まあそう怒るな。実はな雪蛍、お前にハリウッド映画出演の話が出てるんだ」
「は?」
「え……?」
事務所までやって来た私たちは、突然の社長の言葉に驚き、思わず顔を見合わせる。
「お、おい、ジジイ、今、何て?」
あまりにサラリと言われたものだから、私も雪蛍くんも聞き間違いかと思い、彼がもう一度社長に問い掛けると、
「監督のリチャード氏から直々に話を貰ってな。まあ、メインキャストという訳じゃないんだが、それなりに重要な役らしい。それに、受けるとなれば、今の仕事にプラスして英会話のレッスンも入る。スケジュールも相当過酷なものになる。それでも、お前は受けるか?」
やっぱり聞き間違いなんかじゃなくて、雪蛍くんにハリウッド映画出演の話が舞い込んで来たのだ。
「いや、そんなの聞くまでもねぇだろ? やるよ、やるに決まってるだろ?」
「まあ、そう言うとは思ったがな。それじゃあ受けると返事をしておく。撮影は半年後、それまでにスケジュール調整は勿論、英語を完璧にしておく事だ。いいな?」
「ああ、分かってる。やったぜ莉世! 俺もついにハリウッド進出だ!」
「うん、凄いね!」
社長の前と言う事も忘れ、私は雪蛍くんと喜びを分かち合う。
そんな私たちに、社長は咳払いをする。
「それと、お前たちに一つ、言っておく事がある」
「ん? 何だよ?」
「……二人の関係の事だ。今はまだ、外へ漏れてはいないが、いつ漏れるか分からない。これまでは節度ある交際ならばと許しては来たが、今回はハリウッド映画という大きな話を貰っているんだ。特に、マネージャーと恋仲というのは……世間からあまり好ましく思われない。くれぐれも、スキャンダルにならないよう、気を付けてくれ。分かったな?」
「……分かってるよ」
「はい、より一層気をつけます」
社長から改めて私たちの関係について釘を刺された事で、ハリウッド映画出演の喜びムードから一転、微妙な空気が漂っていた。
話を終えてマンションへ戻って来た私たち。社長の言葉を聞いてからというもの、それぞれ思う事があるのか、車内でも自然と口数は少なかった。
「はい、ミルクティー」
「ああ、サンキュー」
ひと息吐く為、紅茶を淹れた私はカップを二つ手にして彼の座るソファーへ向かい、手渡しながら横に腰を下ろす。
「なあ、莉世」
「ん?」
「……俺さ、莉世の事、すげー好きだ」
「ど、どうしたの? いきなり」
「莉世も、俺の事好きだよな?」
「勿論、大好きだよ?」
「だよな」
突然『好き』と伝えて来た雪蛍くんは私にも『好き』かどうかを尋ね、同じ気持ちだと再確認すると満足そうに笑みを浮かべ、
「莉世」
カップをテーブルに置いた瞬間、私の身体を抱き締めてくる。
「雪蛍くん?」
「俺さ、今回の映画、一生懸命頑張る」
「うん」
「そんで無事に公開されて、世間から今以上に認められたら、俺、誰が何と言おうと、莉世との事を公表する!」
「雪蛍くん……」
それは、思いもよらぬ言葉だった。
いつも公表したいと言っていた彼だけど、何かきっかけがないと許して貰えないのも分かっているからそれ以上は言わなかった。
けれど、今初めて、きちんと宣言してくれたのだ。そしてそれは、社長がOKを出さなかったとしても独断で公表するという決意の表れだった。
「本当だよ。いちいち呼び出すとか、何なんだよ一体」
「雪蛍くん、そんな言い方しちゃ駄目だよ」
「まあそう怒るな。実はな雪蛍、お前にハリウッド映画出演の話が出てるんだ」
「は?」
「え……?」
事務所までやって来た私たちは、突然の社長の言葉に驚き、思わず顔を見合わせる。
「お、おい、ジジイ、今、何て?」
あまりにサラリと言われたものだから、私も雪蛍くんも聞き間違いかと思い、彼がもう一度社長に問い掛けると、
「監督のリチャード氏から直々に話を貰ってな。まあ、メインキャストという訳じゃないんだが、それなりに重要な役らしい。それに、受けるとなれば、今の仕事にプラスして英会話のレッスンも入る。スケジュールも相当過酷なものになる。それでも、お前は受けるか?」
やっぱり聞き間違いなんかじゃなくて、雪蛍くんにハリウッド映画出演の話が舞い込んで来たのだ。
「いや、そんなの聞くまでもねぇだろ? やるよ、やるに決まってるだろ?」
「まあ、そう言うとは思ったがな。それじゃあ受けると返事をしておく。撮影は半年後、それまでにスケジュール調整は勿論、英語を完璧にしておく事だ。いいな?」
「ああ、分かってる。やったぜ莉世! 俺もついにハリウッド進出だ!」
「うん、凄いね!」
社長の前と言う事も忘れ、私は雪蛍くんと喜びを分かち合う。
そんな私たちに、社長は咳払いをする。
「それと、お前たちに一つ、言っておく事がある」
「ん? 何だよ?」
「……二人の関係の事だ。今はまだ、外へ漏れてはいないが、いつ漏れるか分からない。これまでは節度ある交際ならばと許しては来たが、今回はハリウッド映画という大きな話を貰っているんだ。特に、マネージャーと恋仲というのは……世間からあまり好ましく思われない。くれぐれも、スキャンダルにならないよう、気を付けてくれ。分かったな?」
「……分かってるよ」
「はい、より一層気をつけます」
社長から改めて私たちの関係について釘を刺された事で、ハリウッド映画出演の喜びムードから一転、微妙な空気が漂っていた。
話を終えてマンションへ戻って来た私たち。社長の言葉を聞いてからというもの、それぞれ思う事があるのか、車内でも自然と口数は少なかった。
「はい、ミルクティー」
「ああ、サンキュー」
ひと息吐く為、紅茶を淹れた私はカップを二つ手にして彼の座るソファーへ向かい、手渡しながら横に腰を下ろす。
「なあ、莉世」
「ん?」
「……俺さ、莉世の事、すげー好きだ」
「ど、どうしたの? いきなり」
「莉世も、俺の事好きだよな?」
「勿論、大好きだよ?」
「だよな」
突然『好き』と伝えて来た雪蛍くんは私にも『好き』かどうかを尋ね、同じ気持ちだと再確認すると満足そうに笑みを浮かべ、
「莉世」
カップをテーブルに置いた瞬間、私の身体を抱き締めてくる。
「雪蛍くん?」
「俺さ、今回の映画、一生懸命頑張る」
「うん」
「そんで無事に公開されて、世間から今以上に認められたら、俺、誰が何と言おうと、莉世との事を公表する!」
「雪蛍くん……」
それは、思いもよらぬ言葉だった。
いつも公表したいと言っていた彼だけど、何かきっかけがないと許して貰えないのも分かっているからそれ以上は言わなかった。
けれど、今初めて、きちんと宣言してくれたのだ。そしてそれは、社長がOKを出さなかったとしても独断で公表するという決意の表れだった。