ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「雪蛍……くん……」
「今更恥ずかしがんなよ。もう何度したか分からねぇんだし」
「――ッん、……」

 顔を背けていた私の頬に彼の右手が添えられると同時に正面を向かされ、そのまま唇を奪われる。

 確かに今更だけど、そういう問題では無い。

 何度しても、身体をまじまじと見つめられたり乱れる姿を晒すのは、やっぱり恥ずかしい。

 でも、恥ずかしいと思いながらもそれを期待している自分がいる。

 触れられ、キスをしているだけでも、身体は火照り、子宮は疼く。

「……い、……やッ……ん、……」

 言葉とは裏腹に、身体はどんどん敏感になっていき、彼を受け入れる準備が整っていく。

 舌を入れられ口内を犯される乱暴な口付けに酔いしれる私を前に、雪蛍くんは不敵な笑みを浮かべながら拘束していた私の両手を解放する。

 手が自由になった私はもっと彼に密着したくて、自ら彼の首に腕を回して彼を求めた。

 それには雪蛍くんも予想外だったのか、一瞬驚いたように身体を反応させる。

 再び激しく唇を重ね合い、それだけでは物足りなくなった私たちは互いを深く求め合う為、何度も何度も繋がった。


 朝方、ふと目を覚ました私は気持ちよさそうに眠る雪蛍くんの寝顔を見て、幸せな気分に浸る。

 これから暫く忙しくなって、こういう風に身体を重ね合わせる事も難しくなるかもしれない。

 それはそれで淋しいけれど、彼の活躍の場が広がるのは、彼女として、マネージャーとしてとても嬉しい事だから、我慢しなければならない。

 そう頭では分かっていても、本音を言えばやっぱり淋しくて。

 急に襲われた言い知れぬ恐怖に身体を震わせた私は雪蛍くんの胸に顔を埋めた。

「……莉世?」
「…………ごめんね、起こしちゃった?」
「ん、……大丈夫。どうした?」

 起こしてしまって申し訳ないと思う反面、寝起きでもすぐに私を心配してくれる事が嬉しくて、答える代わりに彼の背に腕を回してギュッと抱きついた。

「莉世?」
「……何でもないの。暫く、こうしてたい」

 今ここで『淋しい』と言葉にしてしまうと、これから我慢するのが無理になる。

 きっとそれは彼も同じだから、弱音は吐かない。

 私の不安を感じ取ったのか雪蛍くんは、

「……ああ、いくらでもしてやる。莉世が望むなら、いくらでも」

 そう言いながらギュッと抱き締め返して、頭を優しく撫でてくれた。

 その優しさと温もりで再び安心する事が出来た私はもう一度、夢の中へと堕ちていく。


 こんなにも幸せな時間を感じていた私たちには、これから起きる様々な出来事を予測する事など出来るわけが無かった。
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