ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
 あれから会話を済ませて帰宅すると、早速遊から連絡が来ていた。

【さっきは本当に驚いたよ……あのさ、お前、綺麗になったよな】

 メッセージを開いてそんな文が目に入り、私の心は更にザワつく。

【そお? まあ、大人になったしね。遊も、格好よくなったよ】

 でも、こんなの社交辞令みたいなもの。

 昔からふざけ合う事も多かった私たちの事だもの、いちいち真に受けていても仕方が無い。

 そう思いながら私も遊に『格好よくなった』と伝えてみた。

 すると、事態は思わぬ方向へ動いていく。

【……なぁ、今、電話していい?】
【別にいいけど】

 話があるならさっき言えばいいのにと思いつつ、私が『いいよ』と送ると間髪入れずに着信が入る。

「もしもし?」
『悪いな』
「いや、別に構わないけど。話があるならさっき言えば良かったのに」
『あー、まあ、そうだよな』
「それで、何?」
『……あのさ莉世、お前今、付き合ってる奴とか、いるの?』
「え?」
『彼氏、いるのかよ?』
「あー、うん……まあ、ね」
『……そっか、いるのか』
「何よ、いたら悪いわけ?」
『馬鹿、別にそんな事言ってねぇだろ? つーか、こういう事聞く理由、察しろよ』
「え?」
『鈍感なとこ、変わってねぇな』
「何よ、そんな事言う為に電話して来たなら切るよ?」
『待てって! 俺さ、あの時の事、後悔してんだ』
「あの時?」
『遠距離になるからって、別れた事だよ』
「ああ、あの時ね」
『俺はさ、引っ越してからもずっと、お前の事、好きだった。お前は?』
「な、何よ、急に……そりゃ、好き、だったよ」
『好き合ってたんだからさ、遠距離だからって、別れる事、無かったよな』
「そうね。でも、きっとあの頃は会いたい時に会えないっていうのは、耐えられなかったんじゃないかな?」
『……そう、だよな……』
「……遊?」
『……彼氏との仲をリクエスト壊したい訳じゃねぇけどさ……』
「うん?」
『俺、本当は今でもお前の事――』

 遊がそう言葉を紡いでいたその時、ピンポーンとインターホンが鳴り響いて遮られてしまう。

『……誰か来たのかよ?』
「うん、そうみたい」
『彼氏?』
「ううん、彼は忙しい人だから、それは無い」
『もう十時過ぎだぞ? こんな時間に来客とか、約束でもなきゃ変だろ?』
「う、うん、そう、だよね」
『電話繋いだまま、確認してみろよ』
「え?」
『何かあったら大変だろ? ほら早く』
「う、うん……」

 遊との通話を繋いだままインターホンカメラを確認しに行くとそこには、

「え……雪蛍、くん?」

 新人女優とスキャンダルになって世間を探せている彼、雪蛍くんの姿が映っていた。
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