ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
『莉世? おい、どうした? 大丈夫か?』
「あ、う、うん、大丈夫! ごめん、知り合いが来たから切るね!」
『あ、おい! 莉世――』

 会いたいけど、心の準備が出来てない。

 スキャンダルの事を考えると、会いたくない。

 でも、電話では今週末に時間を作ると言っていた。それくらい忙しいはずなのに、こうして会いに来てくれた。

 それに、変装をしてるけど、いつまでも外に立たせておくのは新たなスキャンダルの種にもなりかねないので、色々考えた末に私は鍵を開けてドアを開いた。

「莉世……」
「雪蛍くん……とりあえず……上がって」
「ああ、ありがと」

 久しぶりなのに、会えて嬉しいはずなのに、スキャンダル記事の事が頭から離れなくて笑顔になれない。

 それを分かっている彼もまた、いつになく元気は無くて、何だかよそよそしい感じのまま部屋へ上げる事になった。


「本当にごめん!!」

 部屋へ上がり、リビングに足を踏み入れるや否や、雪蛍くんは大きく頭を下げながら謝ってきた。

「雪蛍くん⋯⋯」

 あまりに唐突な彼の行動に戸惑ってしまう。

「あれは本当に誤解なんだ。玉城とは何でもない。会ってたのは、ある相談受けてたからなんだ」
「相談?」
「ああ、ドラマの出演者の一人からしつこく迫られてる事に悩んでて、それをマネージャーや社長に言っても、相手は大先輩だから無下には出来ない、少しくらい我慢しろって言われたらしくて⋯⋯」
「そんな⋯⋯」
「それに悩んで落ち込んでミスも増えて、事情を知ってるだけに見て見ぬふりも出来ねぇから、相手に誘われねぇよう俺の方からドラマの事で話があるって誘った」
「そう、だったんだ」
「けど、この前撮影の後でそいつに迫られて、襲われかけてたところに遭遇して、助けに入った。その事を相手のマネージャーとか社長に口止めされて、代わりに玉城に付き纏う事を止めさせたから、それが面白く無かったんだろう。いつ撮ったのか知らねぇけど玉城と二人で店から出てきた写真、週刊誌に売られたんだよ」

 理由は分かって良かったし、事情が事情だから玉城さんの方が誰にも話さないでと言ったのかもしれないから話しづらかったのも分かるけど、私は彼女である前にマネージャーだし、そういう事情なら一言相談して欲しかった。そしたら協力出来たかもしれないのに。
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