ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「偉そうな事言ってんじゃねーよ。だったらもう二度とミスはするな。俺が活動しやすいよう、精一杯サポートしろよ」
「ミスについては本当に申し訳なく思ています。これからはより一層気を付けます。サポートに関しては今までもそうでしたが、今後も変わらず努力するつもりです」
「……そうかよ。ま、せいぜい頑張れば」

 話を終えたタイミングで目的地に着き、彼はそう言葉を吐き捨てると私に目もくれず車から降りて早々にビルの中へ入って行った。

(これでいい。これが、本来あるべき姿なんだから)

 そう納得しているはずなのに、何故か心の中にはモヤがかかっている様な気がしてならなかった。


「雪蛍くん、今日は不調ですね。何かありましたか?」

 今日は雑誌の撮影とインタビューという事で撮影スタジオに入ったはいいものの、彼の調子はいつになく悪そうでスタッフの一人にそう質問された。

「いえ、特に何も無かったと思いますが……」

 無いと言いながらも思い当たる節があった。それは、ここに来るまでの車内でのやり取りだ。

 けれど流石にあれくらいの事で撮影にまで影響が出るとは思えず、私は椅子に座り休憩している彼に近付き理由を聞いてみることにした。

「雪蛍くん、何かありましたか?」
「別に」
「それにしては珍しく、撮影中何度も指摘されていたじゃないですか。もしかして、体調が悪いとか……」
「何でもねぇって言ってんだろ! いちいちうるせぇよ! あーくそっ! 気分悪ぃ!」
「あっ、ちょっと、雪蛍くん!」

 怒らせるつもりは無かったのだけど、私の言葉が(かん)に障ったらしく、機嫌を損ねてた彼はスタジオを出て行ってしまった。

「すみません! すぐに連れ戻しますので」

 私たちのやり取りを見ていたスタッフやカメラマンに頭を下げ、私はすぐに彼の後を追いかけた。
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