ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
 あの日から自宅待機になった私はネットやテレビで連日流れる雪蛍くんのニュースを眺めては、溜め息を漏らす日々。

 私の読み通り、世間は雪蛍くんに良い印象を持たず、彼の人気は一気に下がっていく。

 ネットでは叩かれ、案の定ハリウッドの話も無くなりかけている状態だと聞いた。

 全ては私たちの軽率な行動が招いた結果だけど、一番気を付けなければいけなかったのは私。

 雪蛍くんに謝っても謝りきれないくらいに後悔していた。

 そんな彼とはあの日以降会ってもいなければ連絡も取っていない。

 流石にこんな状況下でそんな事は出来ないと分かっているから納得はしてるけど、本当は会いたいし、声だって聞きたい。

 自分から別れを切り出したくせに、そんな風に思っている時点で何の覚悟も出来ていないんだと思い知る。

 喧嘩した訳じゃないから、余計に虚しい。


 それから更に数日が過ぎた、ある日の事。

 社長から連絡があって、今日の夕方雪蛍くんが私たちの件についての会見を開くと聞いた。

 内容としては、私たちの交際は事実だけど、今はもう別れた事、私はマネージャー業を引退した事にするという話だった。

 雪蛍くんもそれで納得していると聞いた。

 きっと周りから説得されたに違いない。

 悲しいけど、それでいい。

 私は夕方の会見をテレビで観る事しか出来ないので、その時が来るのを自宅で待っていた。

 そして、会見が始まるであろう数十分前に、雪蛍くんからメッセージが届く。

 別れを告げられるのかと思って開いてみると、そこには一言、《愛してる》の文字が記されていた。

 彼の意図がイマイチ分からない私はそのメッセージに返信する事が出来ないまま、テレビで速報が流れ、雪蛍くんの会見映像に切り替わった。

 彼は社長と共に沢山の報道陣の前に姿を見せた。

 そして、用意された席に着いた彼はこう切り出した。

「本日はお忙しい中、このような場を設けていただきありがとうございます。連日のように報道されている私とマネージャーである彼女についてのお話をさせていただきたく、本日は皆様に集まって貰いました」と。

 社長の表情から、そこまでは恐らく用意された台本通りの言葉なのだと思う。

 だけど、次の言葉は違うものだったのだろう。

 雪蛍くんが言葉を続けた瞬間、社長の顔色が一気に変わっていったのだ。
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