ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「……雪蛍くん……私……」

 今すぐ、彼に会いたい。

 会って、私の気持ちを伝えたい。

 そう思っていると、

『莉世、今から会いに行くから、待ってて』

 雪蛍くんの方から、会いに行くと言ってくれた。

「でも、仕事は……?」
『今日はもうフリーだから。ま、じじいには怒られるけど、それは覚悟の上。今は、とにかく莉世に会いたい』
「うん……私も、雪蛍くんに会いたい」

 こうして私たちは数週間振りに会える事になった。

 小柴くんに送ってもらって私の自宅へやって来た雪蛍くん。

「莉世、久しぶり」
「雪蛍くん……」

 泣かないと決めていたのに、雪蛍くんの姿を前にした瞬間、嬉しさで涙が込み上げて来て視界が歪む。

「ごめんな、辛い思いさせて」
「ううん、そんな事ない。雪蛍くんのせいじゃないもん」
「莉世、会いたかった」
「私も、会いたかった。会えて、嬉しい」

 私を抱き締めてくれた雪蛍くん。

 彼の温もりに包まれて安心したのも束の間、顔を見合わせた私たちは会えた事を喜び、もっと互いを感じたいと、どちらからともなく唇を重ね合わせた。

 私たちの事を撮られ、この先の未来を考えた時、雪蛍くんの為には別れる事が一番だと思い別れを口にした私だったけど、もし本当に別れる事になっていたら、きっと私の方が耐えられなかったと思う。

 強がってはいたけど、本当は怖かった。

 私だって、雪蛍くんと離れる未来なんて、考えたくも無かったから。

 啄むようなキスを終え、一旦唇を離すと、再び視線がぶつかり合う。

「莉世」
「何?」
「会見で、勝手に莉世の名前呼んでごめん」
「ううん、いいよ。あの時は驚いたけど……嬉しかった。雪蛍くんの気持ちが知れたから。だからね。私も雪蛍くんに今の気持ちを伝えたくて……」

 改めて知れた彼の気持ちに応えたくて、私も自分の気持ちを伝えようとすると、

「待って。あの時のはまだ、全部じゃない。俺はまだ莉世に言って無い事があるから、俺から言わせて欲しい」

 私の言葉を遮るように雪蛍くんが言った。

 あんなにも真っ直ぐに気持ちを伝えてくれたのに、まだ言っていない事があるなんて。

 私も早く伝えたいけど、どうしてもという雪蛍くんの思いを無視する訳にもいかない私が「分かった」と頷くと、雪蛍くんが上着のポケットから何かを取り出した。
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