ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「雪蛍くん、スタジオに戻りましょう」

 楽屋へやって来た私は、ソファーに寝転がり不貞腐れた様子でスマホを弄る彼に問いかける。

「雪蛍くん、聞いていますか?」

 彼との距離を縮めながらもう一度声をかけると、

「うるせぇな、聞こえてるよ」

 視線を向ける事なく、投げやりな態度で言葉を返してくる。

 表情は見えないけれど、『話しかけるな』『近付くな』というオーラを感じ取る事が出来た。

 いつもの私ならここで怯んでいたと思うけど、変わると決めた今ここで怯む訳にはいかず、

「今は仕事中です。戻りますよ」
「おいっ! 何しやがる!?」

 私は心を鬼にして彼からスマホを奪い取り、無理矢理こちらを向かせて話し合う体勢に持っていく。

「仕事が終わるまで、これは預かります。使いたければまずは早くスタジオへ戻って下さい」
「てめぇ!」
「私に暴言を吐くのも、当たるのも怒りをぶつけるのも構いません。ですが、何をされようと、あなたの我儘ばかりを優先する訳にはいきません」
「へぇ、いい度胸してんな。ってか何なの? 今日はやけに強気じゃん」

 いつになく強気な私が気に入らない彼は挑発的な態度で距離を縮めてくる。

「いつまでもあなたのペースに乗せられる訳にはいきませんから。とにかく、戻りますよ」

 そんな彼をかわし、部屋を出ようとドアに手を掛けた、その瞬間、

「いいな、そういう強気な態度。嫌いじゃねぇよ。けどな、力で俺に勝てると思うなよ?」

 その言葉と共に腕を掴まれた私の身体は後ろへ引っぱられ、

「きゃっ!」

 さっきまで彼が寝転がっていたソファーに押し倒される形になってしまった。
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