ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】
「遠いところをわざわざありがとうね」
「いえ、そんな事は。挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした」
「いいのよ、そんなの。渋谷くんは売れっ子さんなんだもの。気軽には来れないわよねぇ、ね、お父さん」
「……まあ、そうだろうな」

 実家に着くと、いつになくお洒落をしたお母さんと、どこか不機嫌なお父さんが待っていた。

 お母さんの方はいつも通りというか何というか明るく笑顔で迎えてくれたのだけど、お父さんは口数も少なく、笑顔すら見せてはくれない。

 正直、こんなに不機嫌な表情のお父さんをあまり見た事が無かったから、何だか妙に落ち着かない。

「……それで、話というのは?」

 電話では話していたはずなのに、見当がつかないと言った素振りでお父さんが問い掛けてくる。

 これに私が答えようとすると、それを制するように雪蛍くんが話を始めた。

「莉世さんから話を聞いた時は、さぞ驚かれたと思います。本来ならば、ああいった報道が出る前に挨拶に伺ってきちんとお話をするべきだったと反省しています。申し訳ありませんでした」
「雪蛍くん……」
「まあ、驚きはしたけど、仕事仕事で浮いた話も聞かないから心配してたのよ、私たち。それがこんなにも素敵な人とお付き合いしていたんだもの、私としては嬉しい限りよ」
「お母さん……」
「――渋谷くんは、莉世のどこがよくて、付き合っているのかな?」
「ちょ、お父さん!」
「莉世、お前は黙っていなさい。私は今、彼に質問しているんだ」

 お父さんの突然の質問に抗議しようとしたのだけど、一喝されてそれ以上口を挟めず雪蛍くんの方に視線を移すと、彼は大丈夫だよと言っているかのように小さく頷くと、再び前に視線を向けて聞かれた質問に答え始めた。
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