拝啓、親愛なる魔王様へ【親愛なる魔王の君へ×人狼様に嫁ぎます】
深く被ったフードから見える黒い目が、ルーチェを捉える。

(……誰、だろう……?)

「だが、目を覚ますにはまだ早い。もう少し寝てな」

そう言い、フードを被った人物はルーチェに杖を向けた。小さな声で、呪文を唱える。

そして、ルーチェは深い眠りに落ちた。



場所は変わり、イヴァンたち皆の集まる館の一室。

「……ルーチェ……」

ルーチェがいなくなった後、クラルは小さくルーチェの名前を呼んだ。クラルの視線は、床に落ちたルーチェの持ている呪具に向けられている。

「……」

少しの間部屋に沈黙が訪れ、クラルは動揺しながらも頭を回転させた。

そして、少し冷静になったクラルは、未だに呪具の化身ーーいずなを抱えたままのギルバートへと視線を移す。

「ギルバート、何があったのか教えてくれない?」

クラルの問いかけに、ギルバートは「嫌だ、と言いたいところだが……」とため息をついた。

「さっき、ここに来る途中で八咫烏と会ってな。その時に、深くフードを被った人物と出会った。そいつは、急に僕と八咫烏に攻撃を仕掛けてきてな。そいつが放った魔法に八咫烏は当たって、八咫烏といずなに分かれたんだ」

ギルバートは、ここに来るまでの経緯を説明する。
< 29 / 37 >

この作品をシェア

pagetop