拝啓、親愛なる魔王様へ【親愛なる魔王の君へ×人狼様に嫁ぎます】

ルーチェが廊下を歩いていると、魔王でありルーチェの義理の兄でもあるクラル・ディスペアと出会う。

「クラル様、おはよう」

「おはよう。今日は、いつもより起きるの早いんだね」

「うん。今日は、早く目が覚めて……といっても、もう9時だけどね……クラル様、少し出かけてきてもいい？ちょっと、図書館で調べ物をしたくて……」

「うん。いいよ」

ルーチェの言葉に、クラルはそう返した。ルーチェは「ありがとう。今から行ってくるね」と微笑むと、歩き出す。

その笑みに胸を高鳴らせながら、クラルは「行ってらっしゃい……」とルーチェの背中を見送った。



図書館で調べ物を終えたルーチェは、家へと帰るために森の中を歩く。

「……ん？」

森の中を歩いていたルーチェは、突然近くから物音が聞こえてきて、音がした方を見た。

（あれは、モンスターと…………イヴァンさんたち！？）

ルーチェの視界に、モンスターと、ルーチェにとって見覚えのある数名の姿が映る。

（えっ、何で皆がここに？ここ、イヴァンさんたちにとっては異世界のはずだよね？）

それを疑問に思いつつ、ルーチェは背負っていた、背丈ほどある杖を手に取った。

ルーチェの愛用している、杖型の呪具である。