拝啓、親愛なる魔王様へ【親愛なる魔王の君へ×人狼様に嫁ぎます】
そのクラルの声に反応するかのように、ルーチェはゆっくりと目を開けた。それに、クラルはホッと息を吐く。

「クラル、様……」

どこかしんどそうな声で、ルーチェはクラルの名前を呼んだ。

体を起こしたルーチェの瞳から、涙が溢れる。涙は頬を伝い、ポタリと床へと落ちた。

それに皆は驚き、動揺が生まれる。そんな中、クラルだけは冷静だった。

「……父様、2人きりにさせて。お願い」

クラルは、じっとクロードを見つめる。クロードは「分かった。俺たちは、屋敷の外にいる」とクラルに伝え、皆を連れて部屋を出た。

それを少しの間眺めていたクラルは、ルーチェに近づくとルーチェを抱き締める。

「……怖い」

ルーチェが、ポツリと呟いた。その声はいつもよりも暗く、クラルは「……思ってること、全部言っていいんだよ」と優しく話しかける。

「分かんない。でも、怖い。苦しい……辛い……クラル様、側に、いて……」

ルーチェはそう言って、クラルの服をぎゅっと掴んだ。

「……ルーチェの仰せのままに」

そんなルーチェを見て、クラルは微笑むとルーチェの頭を優しく撫でた。



「あ!お前ら……!」

クラルとルーチェを2人きりにするために部屋を出たクロードたちは、屋敷の廊下で深くフードを被った2人の人物と出会った。
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