拝啓、親愛なる魔王様へ【親愛なる魔王の君へ×人狼様に嫁ぎます】
「そんなこと、させない……」

ティムの握った手に、力が入った。

「お前らに、私を止めれるのか?こいつの持つ呪具の力は強い。あの呪具使いの呪具を破壊し、呪具使いに呪いをかけたのは、こいつだ」

彼女の隣にいる男性を親指で指し、彼女は言う。男性は、片手に握られた杖を見せた。その杖は、禍々しいオーラを放っている。

『……呪具の無効化に、精神を弱らせる力、ですか……その力のせいで、私とあの呪具は前の姿に戻ったのですね』

その杖を見た八咫烏が、呟いた。

「それでも、僕は止める!」

イヴァンが、杖を構える。

「面白い!止めれるものなら、止めてみろ!」

女性が杖を振ると、空間が塗り替えられていく。屋敷の中にいたはずの皆は、平原の中にいた。別の部屋にいたはずのルーチェとクラルも近くにいる。

急に景色が変わったことに、クラルは驚いた。ルーチェを抱き締めながら、クラルは辺りを見渡し、状況を把握しようとする。

「……クラル。あの2人が今回の件の首謀者だ。戦えそう?」

クロードがクラルに向かって言うと、クラルは無言で頷いた。

「……ルーチェ、行ってくるね」

ルーチェから離れたクラルは、ルーチェにそう言ってクロードたちに近づこうとする。
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