たとえこれが、何かの罠だったとしても。

伊吹サイド

楓たちを見送り、後片付けをしようとしたところで。

「おい、伊吹。楓をたぶらかすなよ…」

「べ、べつに誑かしてませんよ!」

旦那様に咎められ、俺は冷や汗をかく。

この人の裏表の激しさは、どうなってるんだ…。

オン・オフのスイッチの音がしそうな程だ。

「その胡散臭い笑みもやめろ」

さすがにイラッとくるものがある。

もう、猫かぶりもバレているようだ。

「猫を被ったって、俺は騙されないからな…。あー、胸糞悪い」

「あんたに言われたくないんですけどね」

「あ?」

「い、いえ。なんでもないです」

普段はあんなに温厚なのに、今はヤンキーにしか見えない。

この人、実は元ヤンなのか…?
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