たとえこれが、何かの罠だったとしても。

伊吹サイド

「うちにいるのは構わないけど、君たちは楓に馴れ馴れしい。不愉快だ」

突然豹変した旦那様に、兄貴はびっくりしている。

俺も最初は面食らった。

「伊吹は呼び捨て、涼は『楓ちゃん』?俺の楓にちょっかいかけるなよ…」

「それは無理な相談ですね。俺は楓のこと好きなんで」

「このクソガキ…。今すぐ成敗してくれる!!」

「いやいや待って。俺、話についていけないんですけど…」

「うるせぇ。涼はそこの弟をどうにかしろ!」

こうなったら、もう逃げるが勝ちだ。

「兄貴、逃げるぞ」

「え」

兄貴の腕を引っ張り、自室へと走った。

「おい、いいのか?」

「いいも何も、逃げないと今日は眠れなくなるぞ…」

1度捕まると、その夜は永遠に尋問だ。
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