たとえこれが、何かの罠だったとしても。
すぐにでも壊れてしまいそうな、危うささえも感じた。

それでも、俺が少しでもその苦しみを和らげることができたら…。

なんて、俺の勝手なエゴだけどな。

「楓は、なんでも一生懸命なんだ。逃げずに最後まで向き合ってきた」

「そうだね。…俺たちも、父さんから逃げるのはやめて話し合ったほうが」

「あいつに話なんて通じねえだろ」

自分の意見を押し付けて、周りなんて顧みずに動く傲慢な男。

俺は、あいつほど性根が腐ったやつを見たことがない。

あんなやつの血が流れているなんて、嫌気を通り越して負の感情が爆発しそうだ。
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