たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「捕まったら最後、俺たちはどうなるか。俺だって、自分の好きなように生きたい。あいつの道具になるなんて、絶対に嫌だね」

「まあ、そうだよな。…もしあの時、母さんが俺たちを連れて逃げ出さなかったら」

そう、あの日俺たちは壊れていただろう。

得体の知れない薬物の実験なんて、絶対に嫌だ。

あの日あいつは、いつもより優しく母さんに接していた。

あんなに優しそうに話すあいつを見たのは、生まれて初めてで気味が悪かった。

俺たちにも優しく話しかけてきたり、さして興味もない学校のことを聞いてきたりした。

そして、たまにはみんなで出かけようと言い出し連れて行かれた先には、悪名高いと噂の花丸グループの社長がいて…。
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