たとえこれが、何かの罠だったとしても。
伊吹さんにアップルパイを手渡すと、なぜか微妙な顔をされてしまった。

「伊吹さん?」

「いや、なんでもない…」

「楓、あーんして」

「はい、あーん」

珍しく、鋼が甘えてきたのにキュンとしてしまう。

ふふっ。可愛い…。

「おい、何してんだよ」

「何って、伊吹さんがやって欲しかったことですよ。前回の仕返しです」

「おまえ…」

いつものごとく、険悪ムードの2人。

「ちょっと、どうしたんですか!?」

「楓、ほっときな」

「これは見ものだ」

焦る私とは対照的に、胡桃と櫂は素知らぬ顔だ。

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