たとえこれが、何かの罠だったとしても。
回転率を良くするため、1組あたりの滞在時間は30分までに設定している。

「「おかえりなさいませ、ご主人様」」

ああ、恥ずかしい…。

ここは我慢。耐えるんだ、私!

「ご注文は何にしますか?」

「ベリーベリーパンケーキですね?かしこまりました!ご主人様は甘党なんですね」

やるからには、ちゃんとやらないとね。

「何になさいますか?」

「んー、楓ちゃん!」

「きゃっ!…もう、ご主人様ったら」

時折、腕を掴まれたり膝の上に座らせられたりしたけど我慢する。

お客さんの機嫌を損ねる訳にはいかないからね。

…と、ここまでは上手くあしらえていたんだけど。

「楓ちゃん、俺とデートしよ」

「ごめんなさい。私、まだお仕事が残っていて…」

「えー、ちょっとだけ。ご主人様のお願いだよ?」

なんて断りようもなく途方に暮れていると…。

「うちの娘に何か用?」

「お父さん!?なんでここに…!」

あれだけ来ないでって言ったのに!

しかも、伊吹さんと涼さんも一緒だ。

これじゃあ目立って仕方がない。

他のお客さんも、こっちを見ている人が多い。

「やっぱり気になっちゃって。それにしても、何その格好!可愛い…!」

こうなるのが嫌で、キツく言っておいたのに…。

最悪だ。伊吹さんに見られた。



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