たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「楓の寝顔、可愛かったよ。噛みつきたいくらいにな」

「も、もう!やめてください…」

「で?」

「え?」

「なんでうなされてたんだ?」

あ、夢のことか。

伊吹さん、私のこと心配してくれているんだ…。

それだけで、ほんと嬉しかった。

「……だから、どうやっても陰口を叩かれると悟りました」

私がどれだけ努力しても、それでも足りなかったのだ。

それだけ、お兄ちゃんの存在は大きかった。

「でも、伊吹さんが楓は頑張ってるって言ってくれて。…私、本当に救われたんです」

「俺も、楓に救われたよ。俺は楓に出会うまで、全てがどうでも良かったんだ。でも、楓に出会えて俺は変わった。楓を見ていると、俺も頑張ろうって思えたんだ」

伊吹さん…。

そんなことを思っていたなんて、知らなかった。

……ダメ。気持ちが溢れちゃうよ。

「俺は、楓の自分の才能を鼻にかけずに努力し続けるところとか、みんなに優しいところとか、好きだよ」
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