たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「決めつけは良くないよ、伊吹。物事をそうと決めつけたら、そうとしか考えられなくなる。広い視野で物事を見ないと、ね…」

こいつの言うことは、いちいち癇に障る。

「どの口が、言ってんだよ…」

「口が悪いなぁ、伊吹。そんなふうに育てた覚えはないよ?…棗さんの影響かなぁ?」

こいつは、どこまで俺たちのことを調べているのか…。

少なくとも、俺はこいつに育てられた覚えはない!

怒りを鎮め、次の言葉を待つ。

「この子のことが大切なら、やるべきこと、分かるよな?」

電話が切れ、機械音が虚しく響く

「くそっ!」
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