たとえこれが、何かの罠だったとしても。
急いで旦那様に連絡を入れる。

「大変です!楓が攫われました!」

「そ、そんな!」

一刻の猶予もない。

早く楓を取り戻さないと…。

運転手に事情を話し、急いで屋敷へと向かう。

「柳は、高校2年の冬に事故で死んだとされていたが…。その黒幕は、真さんなんだよ。おそらく彼は、柳も楓も殺すつもりだった。ただ、柳が楓を庇ったこと。それで、計画の半分は失敗したわけだ。……大事な息子と妻を失い、自暴自棄になりかけた。でも、そんな俺を立ち直らせてくれたのが楓なんだ。楓がいたから、俺は壊れずに済んだんだよ。もしもあの時、楓まで失っていたらと思うと…」

旦那様の声は、悲しみに満ちていた。

まさか、楓のお兄さんを殺したのもあいつだったなんて……。

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