たとえこれが、何かの罠だったとしても。

伊吹サイド

屋敷に戻り、旦那様と涼とリビングに集まった。

各々の顔が強ばっているのを自覚する。

「一体、真さんはどこに!?」

「おそらく、俺たちが花宮グループに向かえば、楓は開放されるはずです。…兄貴、覚悟はいいか?」

「ああ、もちろん」

「いや、でも私は、これでも二人のことを息子のように大切に思っているんだ。真さんの元へ向かえば、また辛い思いをする!それどころか…」

「もう、いいんです。俺たちは、生まれた時からずっとあいつの『道具』だったんでしょうから…」

「ああ。楓ちゃんの身に何かあったら、俺たちは旦那様にも楓ちゃんにも顔向けできないです」

もう、逃げられない……。

楓と過ごした日々は、とても楽しかった。

できるなら、ずっとそばにいたかった。

でも、それはもう過去の夢だー。
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