たとえこれが、何かの罠だったとしても。

15.望むのはただひとつ

あれから、どれくらいの時間が過ぎたのだろう。

目が覚めたら、車でどこかへ向かっているところだった。

「ああ、目覚めましたか」

薬で眠らされていたのだろう。

頭がぼんやりしている。

「もうすぐ柳さんに会えるから」

その言葉に、私は死を悟った。

しばらくすると、どこか見覚えのある交差点に立っていた。

そう、お兄ちゃんが亡くなった場所……。

途端に、息がつまり呼吸がしにくくなる。

「大丈夫ですか?……大丈夫なわけないか。楓さんがお兄さんを殺した場所だもんね」

「や、違!」

違う…。だって、だってあれは!
< 158 / 220 >

この作品をシェア

pagetop