たとえこれが、何かの罠だったとしても。
私は確実に青信号を渡った。

でも、それを隠すためにこの男は、お金を積んで目撃者を買収したんだ…。

「さあ、最期の言葉を聞かせてくれよ?」

「……伊吹さんのお父さん、一体なにが、あなたをそこまでさせるんですか?」

「は…」

「あなたはさっきから、どこか苦しそうです…。それはどうしてですか?」

どうしてこの人は、誰も見ていないのだろう。

自分のことしか考えていない。……いや、考えられないのだ。

「…うるさい。うるさい!おまえになにが分かる!おまえみたいな、恵まれているやつに俺の気持ちなんて…」
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