たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「確かに私は、みんなに愛されて幸せでした。でも、あなたに大切な人を奪われても、これからどんなことがあっても…。私は前を向いて生きていきます。……友達やお父さん、伊吹さん、涼さんがいるから。私は絶対に挫けません!」

「……やめろぉ!!」

伊吹さんのお父さんが座り込み、私も駆け寄ろうとする。

でも、私はある情景に体がとまった。

男の子が横断歩道を渡っていた。

信号機はもちろん『青』。

そこに、もうスピードで向かってくるトラック。

私は何も考えずに飛び出していた。

男の子の背中を思いっきり押す。

男の子は歩道に倒れ、私を凝視している。
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