たとえこれが、何かの罠だったとしても。

伊吹サイド

手術は無事に成功し、麻酔の効果も切れている。

それなのに…。

「なんで起きないんだよ…」

楓は目を覚まさない。

静かに眠っている様子に、焦りが生まれる。

息をしていないんじゃないか…。

気が気でなくて、何度も呼吸を確かめる。

「早く、早く目を覚ませ!」

「楓、俺を置いていくな…」

旦那様は、憔悴しきっている。

それはそうだ。たった一人残された、大切な家族。

『楓さんは、もう目を覚まさないかもしれません』

さっき医者にそう言われた。

ここ一週間以内に目を覚まさなければ危ないと…。

「楓、目を覚ませ!楓…楓!」


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