たとえこれが、何かの罠だったとしても。

伊吹サイド

もう、目を覚まさないのか?

そんなの、絶対に認めたくない!

その時、僅かに楓の手が動いた。

「楓!?」

「目を覚ませ、楓!」

少しずつ、楓の瞼が開いていく。

「お、とう、さん…。いぶ、きさん…。りょ、うさん…」

「楓…楓!」

ゆっくりと瞼を開いた楓に、涙がとまらない。

「わた、し、会えたよ…。お母、さんと、お兄、ちゃんに…」

その言葉に、旦那様は崩れ落ちた。

「そうか…。2人とも、元気だったか?」

もう、俺たちは涙で顔がぐちゃぐちゃだ。

「い、ぶきさん。心配、かけてすみま、せん」

途切れ途切れに、楓が話す。
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