たとえこれが、何かの罠だったとしても。

17.鋼の思い

翌日。いつもと同じ毎日が始まる。

みんなと一緒に登校して、授業を受けて…。

ただ一つ違うのは、伊吹さんがいないこと。

私は昨日、伊吹さんに振られてしまった。

そして、今朝起きてお父さんから聞かされたのだ。

『伊吹は今、会社の案件が忙しくて楓の執事を離れることになった』

きっと、伊吹さんは私を避けているんだ。

私が、自分勝手に告白なんてしたから…。

今朝は、涼さんと一緒に朝ごはんを食べた。

涼さんは、『ごめんね』ってずっと謝っていた。

『涼さんが謝ることなんてありませんよ。……というか、謝らないでください』

伊吹さんと涼さんが私から離れていく方が、私にはもっと辛い。

……これ以上、私から大切な人を奪わないでください。
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