たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「でも俺は、楓のお兄さんを殺したやつの血が流れて…」

「だからなんだよ!お前が殺したわけじゃない。悪いのはおまえの父親だろ!?なんでおまえが責任を感じる必要があるんだ?文句を言うやつがいたら、そいつらを黙らせるくらいに楓を幸せにしてやれ!棗さんだって、涼さんだっている。楓も俺たちもいるだろ?」

「鋼…。でも、告白は…」

「安心しろ。振られてあげたんだから」

伊吹さんは、覚悟を決めたようかな顔をして。

「鋼、ありがとな」

とても綺麗な顔で笑った。

「誰がおまえの礼なんか…」

ああ、長い長い片思いだった。

でも、好きな人の幸せを願うのが、男ってもんだからな。





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