たとえこれが、何かの罠だったとしても。
離れようとすると、伊吹さんにもっと引き寄せられる。

「逃げるなよ」

耳元で囁かれ、くすぐったくて少し口を開けると…。

「!?」

伊吹さんの舌が侵入してきて、恥ずかしさと驚きで何も考えられなくなった。

離れようと伊吹さんの肩を叩くけど、むしろもっとキスは深くなる。

唇が離れた時には、息が上がってしまっていた。

「い、伊吹さん…!」

「次敬語使ったら、もっとお仕置するから」



「…あんなことされたらそりゃあ」

「楓、どうしたの?顔赤いけど」

「な、なんでもない!」

「おい、おまえまさか…」

どうしたんだろう?

鋼が伊吹さんに噛み付かんばかりに怒っている。

「まさか。まだそこまではしてねぇよ」

「さすが伊吹さん。経験豊富な人は違いますね」

「ああ!?」

また3人の言い合いが始まってしまった。

「楓、今すぐこいつと別れて俺と付き合おう」

「え?」

「鋼!おまえは楓に近づくな!」

なんだかよく分からない状況だ。

「ストップ!周りの目を考えなさい。あんたたち、無駄に目立つんだからね」

周囲に目を向けると、確かにいろんな人がこっちを見ている。

伊吹さんをはじめみんなイケメンだし、胡桃もすごく可愛いからね。

「そうだよ!みんな、顔の良さを自覚して!?」

このセリフに、楓以外の面々は思ったのだった。

「「それは楓だろ……」」

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