たとえこれが、何かの罠だったとしても。

22.伊吹の看病

ふと目が覚めると、目の前に飛び込んできたのは伊吹の顔。

「ひゃあ!」

「なんだよ、そんなに驚くか?」

「驚くよ!」

加えて、手も握られている。

この状態で私は寝ていたのか…。

「かなり熱高いけど大丈夫か?」

「うん。大丈夫」

「嘘つけ。俺には嘘つくなって言っただろ?」

伊吹の手が、額に重ねられる。

その手は冷たくて、頭の痛みが少し和らいだ気がした。

「食欲はあるか?」

「うん、少しなら」
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