たとえこれが、何かの罠だったとしても。
別に慌てるようなことじゃないよね!

「別に何も無いよ。ただ、伊吹さんに名前で呼んでいいって言われたから呼んでるだけ!ですよね、伊吹さん?」

伊吹さんに同意を求めると、なぜか頭を抱える。

「え?櫻庭の方から、楓に名前で呼ぶように言ったってこと?」

いつもは無口の鋼も聞いてきて、少し虚をつかれる。

鋼も興味を示すなんて、みんな伊吹さんのこと知りたいのかも…!

「そうだよ!みんなも伊吹さんって呼ぼうよ」

「おう、そうさせてもらうわ!伊吹さん?」

「伊吹さん、墓穴掘りましたね…」

みんなからの視線に耐えられなくなったのか、伊吹さんは肩を震わせパッと顔をあげた。

そして、私の方に近づいてきた。

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