たとえこれが、何かの罠だったとしても。

5.あの方

「それでは、付近を歩いていたところを急に襲われたということですね?」

「はい……」

さっきから、伊吹さんはずっと口を閉ざしている。

「西園寺楓さんと、櫻庭伊吹さんですね?見受け引受人は誰をお呼び致しますか?」

「父でお願いします、今から連絡するので」

お父さんと電話をしている間、私は心配するお父さんの声をどこか遠くに聞いていた。

伊吹さんと、話をしないと……。

「失礼ですが、あなた方の関係は?」

「私は楓お嬢様の執事です」

「執事!?そ、そうですか……」

警察の人は、それ以上何も追求しては来なかった。

「捜査にご協力、感謝致します」

そして、お父さんが迎えに来てくれて、車で帰っている途中。


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