たとえこれが、何かの罠だったとしても。
伊吹さんとあの男たちは、どう見ても知り合いには見えなかった。

車を走らせしばらくして、伊吹さんは颯爽と自室に引き上げようとする。

ここは、なんとしなくても伊吹さんと話をしなければ!

「伊吹さん、待ってください!」

「……」

「さっきのって……」

「今はまだ、言えない」

今は言えないって、どういうこと?

伏せられた睫毛と、揺れている瞳が儚げで切ない。

一体、伊吹さんは何を抱えているのだろう……。

ドアを閉めようとする伊吹さんに声を掛ける。
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