たとえこれが、何かの罠だったとしても。
伊吹さんに怒られて、初めて気づいた。

そんなこと、言われたことがかったから。

みんな、可哀想って同情してくるばかりで……。

胸が苦しい…。

ああ、そっか。

私、伊吹さんのことが好きなんだ。

こんなこと、口が裂けても言えないけど…。

「伊吹さん、ありがとうございます」

これからは、お兄ちゃんの分まで精一杯生きたい。

自分に自信を持って、まっすぐ。

「お兄さんの分まで無理して頑張らなくてもいいんだ。
楓は楓らしく生きろ。それがきっと、お兄さんの願いだ。無理をしても、お兄さんはきっと心配する。それに、楓はもう十分頑張ってるよ。お兄さんもそれを知って、応援してるはずだ」

うん、そうだね……。

お兄ちゃん、私は私らしく頑張るよ。見守っていてね……。

お兄ちゃんが、『頑張れ、応援してる』って言ってくれている気がした。
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