たとえこれが、何かの罠だったとしても。

7.そんなことって……

昨日は夜も遅かったので、すぐに寝てしまった。

伊吹さんが叱ってくれて、少し気持ちが楽になった。

『お兄ちゃんは私を恨んでいる』

一生、そう思っていたかもしれない。

本心は、お兄ちゃんにしか分からないけれど……。

私は私らしく、楽しく過ごすって決めたんだ。

時計を見ると、朝の4時。

カーテンを開くと、朝の眩しい日差しが差し込む。

昨日の雨が嘘のように晴れて、空は澄み渡っている。

部屋から出ようとドアを開けると、人影が見えてびっくりした。

「きゃ!…って、伊吹さん!?」

「おはよ、楓」

伊吹さんの眩しい笑顔に、胸が高鳴る。
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