たとえこれが、何かの罠だったとしても。
「ただいま、伊吹。もうすぐお父さんの誕生日でしょ?友達と買い物って嘘ついて、買いに行ったの!気に入ってくれるかしら……」

母さんは、親父のことを愛している。

こんなにも親父のことを考え、想っているのに、あいつは……。

「親父、喜んでくれるといいな」

「ええ!」

楽しそうにする母さんに、親父の本音なんか言えなかった。

そして、親父の誕生日ー。

あいつが仕事から帰ってくると、様子がいつもと違った。

「明日の商談は絶対に失敗できないな……。何か手を打たなければ」

「あなた、お誕生日おめでとう!夕飯、みんなで食べましょう?」

そう言った母さんを見て、親父は何かをひらめいたようで目を輝かせた。
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