たとえこれが、何かの罠だったとしても。

楓サイド

伊吹さんに、そんな辛いことがあったなんて……。

「西園寺グループの執事になって、親父ことを告発しようと思ったんだ。兄貴は今、どこにいるんだろうな」

伊吹さん……。

私には何もできないのかな。

伊吹さんの力になりたいのに、悔しい。

でも、それでも……。

「私は、伊吹さんの味方です!」

「ありがとう」

どこか寂しげに笑う伊吹さんに、私も悲しくなる。

「さっきのやつらが俺の名前を言っていたのも、親父の仕業だと思う。親父は、俺を利用しようと狙ってる。もちろん兄貴のことも。だから、俺たちは親父から、あの家から逃げたんだ。名字を変えてまでな……。まさか、特定されるとは思わなかった」
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