たとえこれが、何かの罠だったとしても。
伊吹さんはカッコイイな…。

勉学は自分の糧になる。やっていて損はない。

よくお兄ちゃんも言っていた。

『できないより、できることが多い方がカッコイイだろ?』

私も、そう思って勉強しているのだ。

「良かったら、今度経済学教えようか?」

「いいんですか!?嬉しいです!」

「俺も教えてください」

「え、鋼も?もちろんいいけど…」

鋼が希望している学部って、経済学部だっけ?

「おい、邪魔をするな」

「勉強するだけなのに、邪魔も何もありませんよ」

また始まった、伊吹さんと鋼の口論。

この2人、仲がいいのか悪いのか。

「もう無理…。俺、そろそろ休憩したい」

「櫂、全然問題解いてないじゃない」

櫂の手元を見ると、今度は国語をしていた。

「助動詞と助詞の見分けが難しいんだよ…」

「ここは、このテキストを見ながら…。この『な』は強意の助動詞で、下が推量になる。これで訳ができるはずだよ」

「なるほど!ありがと」

「どういたしまして」

櫂は素直だから、教えたら素直に受け入れる。

呑み込みも早いし、元々地頭がいいからもっと成績が伸びると思うんだ。

「うーん」

問題を解き始めて1時間、結構集中していた。

「どうしたの、鋼?」

「いや、この問題なんだけど」

鋼が指しているのは英語の教科書。
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