たとえこれが、何かの罠だったとしても。
時計を見ると、もう1時間経っていた。

「休憩にしようか」

「おお!待ってました!」

櫂との約束通り、苺のショートケーキを作ったのだ。

「めっちゃ美味しい!」

「本当にね。さすが楓」

「おいしい」

櫂と胡桃は、昔から甘いものが好きなんだ。

鋼はあんまり好きじゃないけど、私の作ったお菓子はいつもおいしそうに食べてくれる。

無理して食べてくれてるのかもしれないけどね。

ふと横を見ると、伊吹さんが顔を顰めている。

「どうしたんですか!?」

「いや、俺も食べたいなって」

「でも、伊吹さん甘いもの苦手ですよね?」

この間カフェに行ったときも、甘いものは食べない感じだったし。

「確かに甘いものは苦手だけど、楓が作ったものなら食べたい」

「分かりました!どうぞ」

「ああ、ありがとう」

そして伊吹さんもケーキを食べてくれた。

「おいしいですか?」

「ああ、おいしい。ホッとする味だな。ありがとう」

そう言って、ケーキを幸せそうに食べている伊吹さんを見て、なぜか泣きそうになってしまった。

伊吹さんからの『おいしい』って、私にとって特別なんだな。
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