死に戻り令嬢と顔のない執事


 リーシャの祖父であるジェドは、自由人だ。
 商人には珍しい豪放磊落(ごうほうらいらく)で、果断な性格。裏表がなく真っ直ぐな人柄の彼を慕う者は多く、当主の座を退いた今もなお彼の元には多くの客人が足を運んでいる。

 ……ただし。
 実の息子、つまりリーシャの父との仲は険悪であった。

(その所為で、前の人生で私はお祖父様に会うことができなかったのよね)

 遠い目をして、リーシャはため息をつく。

(でもきっと……私から会いたいと伝えれば、歓迎されることはなくても相談には乗ってくれるはず……)

 色々な貴族と親交のある彼を味方につければ、できることもぐんと広がるだろう。

 長い間不義理を続けてきた彼にそんな目的で再開することに幾分かの後ろめたさを抱えながらも、リーシャは次への行動に向けて想いを馳せたのであった。


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